デジタル化した現代だからこそ知っておきたい武士の心得
小笠原流礼法とは、約700年前の室町時代に確立した武家の礼法。いわば武士の百科全書のようなものです。「武士の時代は封建制度の下、上下関係が非常に厳しく、一つ過ちを起こせば自ら命を絶たなくてはいけないという緊迫感がありました。そのような社会の中で、武士をまとめる規範として礼法は生まれたのです。
「堅苦しいものに思われがちですが、決してそうではありません。礼法は、相手を慮る気持ち、察する気持ちなど、日本人が本来持っているはずの心がベースになっており、かたちのみならず心が伴うことが肝心なのです」と小笠原流礼法の伝統を受け継ぐ宗家の小笠原敬承斎さんは話されています。
つまり「畳の縁は踏んではならない」などのかたちばかりにこだわるのではなく、その所作の背景にある相手を思う心が大切なのです。その心構えが作用してか、一つの所作には独特の凛とした美しさがあります。そして、無駄がなくて動きやすい、相手に危険を与えないなど、合理性も併せ持つのです。デジタル化した現代だからこそ、小笠原流礼法の基礎にある武士の精神や日本人の心をもっと知るべきかもしれません。
正座のコツ
すぐに立ち上がれる片膝を立てた姿勢とは違い、相手に敵意がないことを示していたのが正座。後ろにもたれると美しくなく足もしびれるので、前方に体重を乗せるのがコツです。
正座までの流れ
- 立った姿勢と同じように腰から上をまっすぐに伸ばし、かかとに全体重が乗らないようにする。
- 膝元は、男性は握りこぶしひとつ分開け、女性は合わせる。
- 上体が前方に傾かないように腰を沈める。
無雙直傳英信流の礼法における「着座」の流れ
- 神座または上座を左にして着座する提刀の姿勢から左足をわずかに引き、袴の左内側を外側に軽く捌き、左足引いて左膝をつく。
- 袴の右内側を外側に捌いて右足を引いて右膝をつく。
※熟練者ともなれば、左足をわずかに引いたところから、袴の左右内側を順次外側に捌き、左足を前に進めてつき、次に右足を左膝に揃えて着座するのが望ましい。 - 両足裏は重ねず(重ねる場合は左右親指がつく程度)両膝の間隔は拳一つ程にして静かに着座する。
- 右人差し指と中指と中指の間に下げ緒の栗形から三分の二のところを挟み、右手親指で鍔、他の指で鞘を握り、左手は指を揃えて伸ばし左腰にあて、軽く鞘を押さえながら右手で鞘を抜き取るように鐺を右後ろに運ぶ。
- 刀を音が立たぬように鐺からつけ前に倒すようにし、刀を内側に鍔が膝の線にあるように体側より三寸程度離れたところに置く。
- 肩の力を抜き、両手は脇腹を打たれないように自然に垂らし、手は股の付け根に指を揃えて置き、肘を張らないように気をつける。
- 目は半眼にして水平線上遠くの山にたなびく霞を望むが如く(この目を「遠山の霞」という)、顎を引いて臍下丹田に力を入れる。
- 上体が屹立し、八方ならびに正面の敵に対し、何時でも如何ようにも応じられる心と身体の構え、態度でなければならない。
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居合道は無理なく続けられる健康にも良い武道ですので、お気軽にご参加いただければと思います。